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目指せ、デジつよ文系!~デジタル社会で輝ける人材を目指して~
生活や産業をはじめ、あらゆる分野で広く普及しているデジタル技術。さまざまな新しいサービスが登場し、社会課題の解決に貢献するなど、デジタル技術は、私たちの日常生活に便利さと快適さをもたらしています。こうした中、山口県立大学では「デジつよ文系(=デジタルに強い文系)」人材を育成するため、新学科を設立します。
今回は山口県立大学が挑戦するデジタル人材の育成に向けた取り組みについて、阿部真育(あべ まいく)准教授にお話を伺います。

令和7年4月から国際文化学部に「情報社会学科」が新設されるそうですが、その背景や目的を教えてください。
はい。新学科設置の背景として、社会情勢の大きな変化があります。18歳人口が減り続ける中、地方では都市部への人口流出が続いています。また、社会全体で急速にデジタル化が進むなど、ヒト・モノ・情報をはじめとするさまざまな格差が広がっています。
このような社会情勢の中、地域では若者を中心とした地域課題を解決する人材へのニーズがますます高まっています。特にこれからのデジタル社会においては、地域課題の解決に向けて、データをデジタル化し、読み取り、データを活用する力が必要とされており、地方で不足しがちなデジタル人材を育成する必要があります。
そのため、本学でもデジタル人材の育成に着手することになりました。

文系学部にデジタル関連学科を設置するのは全国的にも珍しいんですよね。
そのとおりです。情報系人材のニーズの高まりとともに、全国の大学で情報系学部の設置計画が相次いでいます。情報技術が急速に進歩する一方で、その活用についていくことが難しい方もおられたり、情報を利用する人たちの視点が不足し、ミスマッチが起こっている現状があります。こうした現状や課題に対応するため、山口県立大学だからこそできる「真に地域に必要な情報系人材」とはどのようなものかを検討し、今回の「デジつよ文系」と表現した新たな教育をスタートさせることになりました。
デジタル化が進んでも、それをどう活用するかが重要ですよね。
「デジつよ文系(=デジタルに強い文系)」。一度聞いたら忘れられない素敵なキャッチコピーですが、どんな想いを込められたのですか。
これまで本学で培ってきた文系ならではの素養をベースに、「デジタル」の教養と「ビジネスマインド」を学ぶ教育を取り入れることで、文系の視点を持ちながら情報技術を生活者視点で活用し、地域の課題解決につなげることができる人材を育成するという、他大学にない新たな教育を展開できるのではないかと考えました。それが今回の情報社会学科のコンセプトであり、「デジつよ文系」に込めた想いです。

なるほど。では、新学科でどのようなことが学べるのか教えてください。
情報社会学科ではDX(※1)やAIなどのデジタル技術を学べる科目や、DXを活用して実際に企業などが抱えている課題解決に向けた演習を行います。また、政治学や経済学などさまざまな専門分野の教員が「情報」の視点から授業を展開し、その歴史や活用方法について学ぶことができます。情報を活用するスキル、人や組織をつなげる対話力、人や地域に寄り添う視点を身に付け、イノベーションを創出する力を身に付けることができます。
※1 デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略。デジタル技術の活用により人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること。
実際のデジタル技術を活用した授業をはじめ、デジタル技術をどう活用するのかという視点から学ぶことができるんですね!ちなみに、新たな学びの場として「メタバース」も整備するんですよね。
はい。新たな教育の学びの場として「メタバース」を整備し、遠隔地にいる企業の方や高校生、他大学の学生などとPBL(※2)発表会や合同授業の実施などに活用することを想定しています。ゲーム感覚でコミュニケーションを取ることができ、より活発な連携が期待されます。
また、実地教育では、対話やアイデアの創出を促す仕組みを取り入れた「情報ラボ(仮称)」など、イノベーションの源泉となる教育環境の整備を検討しています。
※2 Project-Based Learningの略。課題解決型学習と呼ばれ、学生が自ら問題を見つけ、その問題を自ら解決する能力を身に付ける学習方法のこと。



楽しみながら学ぶことができそうですね!学生は卒業後の進路も気になると思いますが。
卒業後の進路としては、商社や貿易、小売業を始めとした各種サービス業、公務員などを想定しています。例えば、事業企画担当者として、経営層の意思決定に基づき情報収集を行い、それらを活用できる技術などを設定したり、技術者との仲介役を担うことで事業計画の策定から実行までを行うことができる人材などです。
どのような分野の企業・団体でも、情報技術を扱う専門的人材だけでなく、実際に課題に当てはめて活用できる人材が必要だと思います。当学科で育成した人材には、情報技術を活用して課題解決やイノベーションを提案・実行できる企画職としての活躍が期待できます。
また、高等学校情報教員免許の取得が可能となるよう文部科学省へ申請しています。

さまざまな分野で活躍できそうですね。
「こんな人はデジつよ文系に向いている」「こんな人に学んで欲しい」など、求める学生像はありますか。
『人のために、人と一緒に何かをしたい人』『人の意見を聴き、自分の考えを伝えられる人』はデジつよ文系に向いていると思います。数学は苦手でも最新技術に興味がある方や、これからの社会で必要な力を身に付けたい方など、小さなきっかけでも良いので、デジつよ文系に興味のある方には、ぜひチャレンジしてほしいです!
最後に読者の方にメッセージをお願いします!
これまでは、情報技術は発達しても、その技術を社会にどう生かすかや、使い方を教えてくれる人が不足しており、理系と文系が社会の中でうまく融合できていなかったと思います。そこをつなぐのが「デジつよ文系」です!文系学問を使いデジタル化による地域課題の解決を図っていくことができ、他大学にない新しい教育ができると思います。 あなたのチャレンジを待っています!
多くの方に“デジつよ文系”を知っていただきたいですね!
本日はありがとうございました!
“デジつよ文系”に関する詳しい情報は、お問い合わせいただくか、山口県立大学ホームページからご確認ください。
●デジつよ文系になる。

プロフィール

阿部 真育 准教授 兼 DX・IR推進室長
専門分野/土木計画学、獣医疫学
略歴/北海道大学大学院 環境科学院を修了後、建築コンサルタント会社に勤務。
勤続中、京都大学大学院にて経営学修士(MBA)と博士(工学)を取得した。
その後、北海道大学 数理・データサイエンス教育研究センターにてデータサイエンス教育研究に従事。2022年より現職。
●山口県立大学
〒753-8502
山口県山口市桜畠6-2-1
TEL:083-929-6600 FAX:083-929-6630

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